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2022-05-18

「人事評価制度」について

こんにちは。齊藤マネージメントサービス 代表の齊藤です。本日は3月のメールマガジン「社員を辞めさせない仕組み作り」で触れました人事評価制度について考えてみたいと思います。こちらも制度を作る際にどの様な点に気をつけたら良いか良くご質問を頂きます。

1.人事評価制度の必要性
人事評価制度を作る必要性はいくつかあります。
1)労働法上の要請
例えば、社員が10名以上になれば、就業規則は法的要請から必須となります。それと同じ様に組織が大きくなるにつれて個々の社員に対する労務管理の必要性が出てきます。
2)組織活性化や雇用管理上の要請
社員を効率的に活用し、生産性を向上するために、配置管理、教育訓練、人事異動の計画等が必要になります。これを行う上で個々の社員の能力を的確に評価、把握する必要があります。
3)経営方針に対しての意思統一
社員に対する仕事の意識付け、質の向上を促す事が必要になります。

なにもしないとどの様なことが起こるのでしょうか。
経営者の「社員」に対する問題意識(課題)は以下の様なものです。良くこの様なお話を伺います。「なぜ自分と同じ様に仕事に取り組んでくれないのか?」「なぜ自発的に考えてくれないのか、工夫しないのか?」

一方、社員の「会社」に対する不満は以下の様なものです。社員の方からはこの様なお話を伺います。「一生懸命やっているのに評価されない」「何が評価されるのかわからない」

ここに大きなギャップが存在します。このギャップが大きくなると会社に対する不信感となり、積もり積もってくると労務問題や退職につながっていきます。

 こうならないために、
◆会社の将来像を示し、社員が会社の将来像と自分の将来像を重ねられる様な状況が必要です。
◆質の向上には、社員、特に幹部クラスに対して、期待する役割、責任、果たすべき職務内容を明示する必要があります。
◆その上で達成度、遂行度の基準を設け、それに評価や処遇を連動させる仕組みが必要です。

2.会社の方向性の明確化とモチベーション
人事評価制度を作る目的は、
1)会社の業績が向上する様に社員のモチベーションアップを図ること
2)社員を効果的に採用し、質の向上を行いながら定着を図ること
になります。それではモチベーションを左右する要素は何なのでしょうか。
私は、「会社の方向性と社員の方向性の一致」「会社からの必要性」の二つと考えています。別な言い方をすれば、「会社の方向性が社員のやりたいことであり、社員がその為に努力してスキルをつければ会社に貢献ができ、結果、評価され処遇される」ということになります。
これを通じて教育と評価が一体となり、正の循環が生まれます。この人材育成制度こそが、人事評価制度そのものなのです。

3.人事評価制度と会社の方向性の明確化
人事評価制度を通じて、会社は社員に対して以下の事を理解させる必要があります。
1)会社のコンピテンシー
2)会社が求めている個別要素(スキル、人材、アウトプットなど)およびそれらの具体的内容
コンピテンシーとは、成果につながる行動や活躍する人の特徴的な行動や考え方を明示したもので、ここでは、会社が求める人材像を明確にし、それに照らして個別要素基準を具体的に定めていくことになります。これを通じてこうすれば評価されるという事が社員に判る様になります。スポーツで言えばゲームのルールを知ることに他なりません。

例えば、課長と部長に求められることは違いますが、何が違うのでしょうか。
部門の成果なら以下の違いがあると考えます。
 課長:目標達成(エース4番、キャプテン 成果を問われるのは1年)
 部長:目標設定、戦略策定、変革力(コーチ 成果を問われるのは将来も含めて)
人材育成に関しても以下の違いがあると考えます。
 課長:部下の人材育成
 部長:社内、社外からの人材発掘、活用

4.等級制度、評価制度、給与制度の関係性
では、これらをどの様な形で人事評価制度に盛り込んでいったら良いのでしょうか。人事評価制度の中身には、等級制度、評価制度、給与制度があります。

等級制度では、等級ごとに会社が社員に求める社員像を定義します。3等級であれば、「業務については安心して任せることができる。中略、自らの業務だけでなく、部署の課題を発見し改善に向けた具体的な行動ができる」といった人物像という感じになります。

評価制度では、この社員像に対して必要な項目を決め、個別具体的に要件を明示します。要件が「創造的な態度」であれば、「新しい発想やアイデアを積極的に受け入れ、発展させようとする」姿勢という感じになります。
評価制度を通じて、等級制度で求める社員像と社員の現状の乖離が確認できますので、それを給与制度にリンクさせていきます。

5.人事評価制度を作る上での注意点
実際に人事評価制度を策定する際に以下の点を検討します。
1)評価制度の要素
ほめるべきポイントとこれから育成すべきポイントを明確にします。繰り返しになりますが、評価と育成は表裏一体、人事評価制度の目的は社員の育成です。

2)相対評価と絶対評価
評価は絶対評価を基準にした制度であるべきと考えます。その上でできるだけ具体的に要素を明示していく方が不公平や曖昧さを排除することができます。

3)運用しやすいかを検討
あまり細かい制度を作ると運用が難しくなります。

その他、良く質問を頂くことについても触れます。
4)評価項目の多寡
評価項目が少なければ評価者負担が少なくて済みます。但し、評価項目があまりにも少ないと隙間ができ、個人の好き・嫌い、主観が入り込む余地が増えます。一方で、評価項目が多くなると評価者負担が大きくなります。適度なバランスが必要になります。

5)成果主義のみの評価制度
評価基準を明確にしようとするあまり、数字だけを評価基準とする成果主義型の制度設計をする会社を見かけます。但し、この評価方法だけでは問題があります。なぜなら、この制度では数字を上げる事だけが優先される為、「数字は作れる」ものの、他部門に対する配慮や部下の指導・育成もできず、また、「在り方」「考え方」が会社の方針にそぐわない中堅社員を生み出す事にもつながりかねません。

6)手当の取扱い
評価制度の構築に際しては、現行の賃金体系の見直しが欠かせません。評価制度から除かれた手当が多く存在すると評価と処遇の一貫性が保てなくなる可能性があるからです。賃金体系についてはできるだけシンプルにし、基準が曖昧な手当などはできるだけ整理すべきと考えます。

6.評価項目の設定の仕方
評価項目を作る際には、以下の観点がぬけていないかを確認します。
1)明確で具体的であること
2)達成度が定量的に測定可能であること
3)現実的に達成可能であること
4)経営目標やビジョン、事業計画とリンクしていること
5)期限が設定されていること

7.まとめ
◆人事評価の土台は普遍的であり、汎用的でもあります。業界、業種、会社規模に関わらず、会社が社員に求めていることの本質は共通しています。
◆会社が期待する人材像を明らかにすることで、各職位が今やるべきこと、今後の目標が明確になります。
◆現在「課長」であっても、「課長」クラスが求められるコンピテンシー”だけ”を達成すれば高い評価がされるわけではありません。次のクラスに求められるスキルを視野にいれてチャレンジすることが重要です。また、それを評価する(褒めること)が大切です。

本日は、人事評価制度について、考察させて頂きました。
人事評価制度は、実際に作ること以上に継続して運用することが大切です。
人事評価制度が変われば、社員が変わり、会社も変わります。そして、会社の文化が醸成され、培われます。
最終的には、会社の文化は、強い企業体質を作ることに通じます。
この機会に、人事評価制度の策定をご検討されてはいかがでしょうか。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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